本レポートは『日本民俗学概論』を通して、「民俗学」を整理し、理解を深めるためのものである。
★福田アジオ・宮田登らによって書かれた民俗学の入門書。各論(家・村落・農耕儀礼・禁忌・昔話・伝説・etc…)に関する研究の基礎知識や用語・研究課題、民俗学における研究方法や調査方法について解説している。
★衣食住や民間習俗(風俗・習慣・信仰・民俗芸能)・伝説・伝承などの民俗資料を研究することによって、日本人の生活文化や社会・精神構造(考え方)・歴史を明らかにしようとした学問である。(下記❶❷❸から勘案)
❶柳田国男監修『民俗学辞典』の「民俗学」の項では…「民間伝承を通して生活変遷の跡を尋ね、民族文化を明らかにせんとする学問である」*2と定義されている。
❷福田アジオの定義する「民俗学」とは…「民俗学は、全国各地において世代を超えて伝承されてきたならわし、しきたり、いいつたえという民俗事象を資料として研究する 学問である」*3
❸谷口貢の定義する「民俗学」とは…「民俗つまり民間伝承を対象として、そのもつ意味について分析的考察を行い、生活文化を再構成する学問であるといえる」*4
■代表的な調査方法として…
フィールドワーク、観察調査、調査票調査(アンケート)、聞き取り調査(インタヴュー)、文書解読、実測調査、etc…。
➔調査スタイルとしては「巡礼・移動型」と「一点集中・定着型」がある*5。
・調査に必要な物:記録用ノート・ビデオ・ボイスレコーダー、etc…。
・上記はあくまで基本的な方法であるため、柔軟に対応する必要がある。
・話者のハナシの間違い(事実に反する事柄)も重要な情報である。
■ 代表的な研究方法として…
【重出立証法(比較研究法)】:柳田国男が提唱した研究法である。対象となる民俗資料を日本全国から収集し、類型間の相違点を比較する研究方法。
【地域研究法(個別分析法)】:福田アジオによって提唱された研究方法である。柳田の重出立証法を批判し、一つの地域で採集した民俗資料を分析することを主とした研究方法。
民俗資料の細分化では、24分類*6されている。
【24分類】総論、住居、服飾、食物、村制、農耕、山村、漁村、諸職、交通、族制、婚姻、産育、葬送、年中行事、信仰、神名、俗信、芸能、児童、言語、伝説、昔話、沖縄
近代化や都市化に伴い、民俗学の領域や対象も変化。1970年代以降、現代(都市)民俗学の登場*7
●「有形文化」(住居・衣服・家族・林業・農業・etc…)=目に訴えかえるもの。
●「言語芸術」(命名・言葉・昔話・伝説・民謡・etc…)=耳に訴えかけるもの。
●「心意現象」(妖怪・幽霊・禁忌・信仰・etc…)=心に訴えかけるもの。
★民俗学とは民俗資料を通して、日本人の歴史や生活文化を明らかにする学問である。
*1:福田アジオ・宮田登(1983=2007)『日本民俗学概論』吉川弘文館
*2:柳田国男[監修](1951)『民俗学辞典』東京堂出版、p.582より引用。
*3:福田アジオ・宮田登(1983=2007)『日本民俗学概論』吉川弘文館、p.265より引用。
*4:佐野賢治・谷口貢・中込睦子・古家信平[編著](1996)『現代民俗学入門』吉川弘文館、p.4より引用。
*5:政岡信之・政岡信洋[編](2007=2004))『こんなに面白い民俗学』ナツメ社、p.20を参照。
*6:柳田国男[監修](1951)『民俗学辞典』東京堂出版を参照。
*7:農村の都市化した地域や、都市空間を調査対象とした学問。→佐野賢治・谷口貢・中込睦子・古家信平[編著](1996)『現代民俗学入門』吉川弘文館を参照。
*8:上野和夫・高桑森史・野村純一・福田アジオ・宮田登[編者](2006=1974)『新版 民俗調査ハンドブック』吉川弘文館、p.186を参照。