Nightfall

オカルト懐疑論。超常現象を調べたり、文献レビューしたり、オカルトニュースを紹介したり。

【神林家の伝承】こおどり様(オオカメ宮)に関するレポート

こおどり様 (オオカメ宮)

こおどり様は、渡辺裕二氏の論文「神林家の伝承 オオカミを祀るお宮」[2001]に登場する、上桑原の神林家で祭祀されている狼の御霊(ごりょう)である。なお「こおどり様」は、「オオカメ宮(みや)」とも呼ばれる場合があり、旧暦の1月26日にはお祭りをするという。

(注)渡辺氏の取材時期は1999年8月17日。
(注)御霊信仰とは、怨霊を祀ることで御霊として神格化させ、祟りを鎮め、人々に恩恵をもたらしてもらうという考えの信仰のこと。

神林家の伝承の要約

神林家の先祖、弥十郎は狼を飼っていたという。ある日、狼と共に鵜の巣にある川へ、うなぎ捕りに出掛けた。川で待機していたところ、狼の異変を察知(虫のしらせ?)した弥十郎は、(弥十郎自身の)身代わりを作り、寝かせ、近くの草木(または木の上)に身を隠した。突如、狼は身代わりに牙を突き立てたのだという。弥十郎は身の危険を感じ、狼を撃ち殺した。その後、因果関係は不明だが、上桑原で流行り病が蔓延し、「狼の祟り」ではないかと噂になった。祟りを鎮めるために狼を祀ったのだという。
なぜ、狼が弥十郎(身代わり)に襲い掛かったのかは不明だが、友を撃ち殺した弥十郎の気持ちを考えるとやるせない。
渡辺論文[2001:55頁]より引用
参考文献
★渡辺裕二(2001)「神林家の伝承 オオカミを祀るお宮」『民話と文学』32号、民話と文学の会、pp54~58

幽霊による殺人事件?ベル・ウィッチ伝説

  ベルウィッチ(ベル家の魔女)伝説。1817〜1821年頃、アメリカのテネシー州ロバートソン郡のジョン・ベルが運営する農場屋敷で「魔女」や「ケイト・バッツ」と名乗る幽霊がポルターガイストなどの超常現象を引き起こし、最終的にジョン・ベルを殺害してしまうという伝説である。
コリン・ウィルソンポルターガイスト*1やピーター・ヘイニング『世界霊界伝承事典』*2でも幽霊によるポルターガイストや殺人事件として紹介されている。またローズマリ・E・グィリー『妖怪と精霊の事典』*3では3本のベルウィッチ伝説を紹介しており、設定やストーリーが段々と変化していることを指摘している。超常現象を懐疑的に調査しているジョー・ニッケル博士によれば、他のポルターガイストと同様に子供(ベティ?)の悪戯の可能性や新聞記者エミ・V・イングラムによる創作などの説があり、真偽不明だという。*4

*1:コリン・ウィルソン著&宮川雅訳(1991)『ポルターガイスト青土社

*2:ピーター・ヘイニング著&阿部秀典訳『世界霊界伝承事典』柏書房

*3:ローズマリ・E・グィリー著&松田幸雄訳(1995)『妖怪と精霊の事典』青土社

*4:The ‘Bell Witch’ Poltergeist | Skeptical Inquirer

『怪異妖怪記事資料集成』シリーズ

『怪異妖怪記事資料集成』シリーズとは、湯本豪一先生が20年もの月日を掛けて明治期(約4300件)、大正期(約4400件)、昭和期(約4600件)の怪異や妖怪、オカルト、心霊、民俗、怪談、怪事件などに関する新聞の記事を網羅的に収録した、妖怪新聞の集大成ともいうべき大型本の総称である。

なお注意点として、劣化している箇所(文字潰れ、記事破損など)が複数あるため、頑張っても読めない記事がある。

ネットに載っていないような事件や事例、出来事が載っている。明治期にも怪異は民衆の心を虜にしていることがわかる。その時代独自の怪異が誕生し、記事として取り上げられている。例えば人魚や、件(くだん)、アマビコ などである。戦争や飢饉が起こり、社会不安が伺える。しかしながら、全ての妖怪、心霊話が与太話として断ずることはできないのも、また事実。この記事の中に、本物(リアル)が交じっているのかもしれないと思うだけで、胸の鼓動を抑えられない。

胸踊る見出しをいくつか紹介


「娘、狗子を産む」「魚が降ってくる」「化物を見た」「家が迂鳴(うな)り出す」「大沼に怪魚現る」「呪われた家」「死霊の祟る家」「化物屋敷」「幽霊に意見した中尉の話」「福岡市近郊の幽霊事実譚」「狐の子を産む −半身は人間半身狐体–」「不思議なる人間」「舞台から幽霊」「アリエ」「尼彦」「人の言葉を話す犬」「机から火の玉」「不思議な仙術 –仙術に名を得し雷雨仙人–」「幽霊退治請負所」

▲全六巻あり、内訳として明治期一巻、大正期上下巻、昭和期は上中下巻である。一冊一冊が分厚い。兎に角分厚い。総重量約30㎏(=1冊約5kg×6冊)。ほぼ持ち運び不可能型書籍とも言える。

出発社は値段が鬼畜(学術書のため)なことで定評のある国書刊行会である。学生や学生経験者ならば、一度は目撃する。

編者は民俗学者、日本風俗史家、怪異・妖怪資料研究家などの肩書きがある湯本豪一(ゆもと こういち)先生である。法政大学大学院修士課程修了し、川崎市市民ミュージアムに従事し、最終的に学芸室長となった。現在は前述のような学者としてトークイベントなどでも活躍している。主な著書に『妖怪百物語絵巻』や『日本幻獣図説』、『図説江戸東京怪異百物語』、『今昔妖怪大鑑 湯本豪一コレクション』などがある。

筆者が購入したのは、古本専門のネット通販「日本の古本屋」、密林王「Amazon」、オカルト系古書店「オカルト古書店ナインブリックス[注1] 」さんである。

[注1]【住所】神奈川県横浜市中区日ノ出町2-110-1 ミリカステーロ横濱南アビターレ1階。最寄り駅は京急本線、日ノ出町から徒歩3〜5分程度。

【営業時間】 火曜日 11時〜20時
水曜日 15時〜20時
木曜日 11時〜13時
金曜日〜日曜日は11時〜20時

定休日は月曜日、第三土曜日だそうだが、営業時間の変更も考えられるので、公式HP「ナインブリックス – 古書・DVD 買取、販売」やTwitter (@ok9bricks)を事前に確認しておくことをお勧めする。

「日本の古本屋」で偶然、12万の『昭和戦前期怪異資料集成』を発見し、速攻でカートにぶち込んだ。「amazon」では新品の『大正期怪異資料集成』9万7200円で購入。ナインブリックスさんでは中古の『明治期怪異資料集成』を4万ほどで購入できた。

ちなみにブックオフオンラインではもっと安く売っていたが、既に買われてしまっているため、現在中古価格で購入はできない。安価購入するには、日々ネット通販サイトをチェックすることが必要不可欠なのである。

平成も、もうじき終わる。

消費税10%前に購入するなら、まだ間に合う。

買う価値は十分あるはずだ。

おまけ

『明治期怪異資料集成』の紙表紙と本表紙



『大正期怪異資料集成』の紙表紙と本表紙



『昭和戦前期怪異資料集成』の紙表紙と本表紙