Nightfall

オカルト懐疑論。超常現象を調べたり、文献レビューしたり、オカルトニュースを紹介したり。

1934年の東京朝日新聞等に掲載された「発光する女性」は本当に実在したのか?

  東京朝日新聞昭和9年5月16日号や日伯新聞昭和9年7月25日号等に掲載されたイタリアの「発光する女性」アンナ・モラロをご存知だろうか。
  4月5日、アンナ・モラロは就寝中に心臓から光線を発し、最終的に全身から発光をしていたという。隠し持った発光物の類は見当たらず、原因不明である。例えば動物ではホタルやバクテリアによる病変種により発光するホタルエビなどが挙げられるが、本当にそのような特異体質の人間が存在するのだろうか。医学博士・奈良信雄監修の『ざんねん? はんぱない! からだのなかのびっくり事典』*1によれば人間には特殊な機器を通して認識可能な程の微弱な光を発しているという。これを「生物発光作用(バイオフォトン)」と呼ぶ。岡部弘高と甲斐昌一は「バイオフォトンはすべての生物や生体組織で観測される非常に弱い生物発光で,通常,光子として検出される発光を指す 」*2と定義している。バイオフォトンは癌細胞増加やストレスなどの要因により強力になる。東京朝日新聞内でもバイオフォトンの可能性が高いと述べられていた。
  考察。改めて発光人間は実在するのだろうか。発光生物学を専門に研究をしている中部大学応用生物学部教授の大場裕一は肉眼で認識可能な人間の発光を完全否定している*3。そして筆者には疑問がある。東京朝日新聞昭和9年5月16日号では1909年に無線通信に関する研究でノーベル物理学賞を受賞しているグリエルモ・マルコーニが調査員であるのに対し、日伯新聞昭和9年7月25日号ではグリエルモ・マルコーニヴェネツィアの名医と呼ばれるファブリネ・ヴィターリー教授を調査員として派遣しているという情報の矛盾がある。ファブリネ・ヴィターリーなる教授に関する情報もインターネットでは得られなかった。教授クラスであるならば何かしらヒットしそうなものである。ファブリネ・ヴィターリー教授は架空の人物の可能性もあるかもしれない。またノーベル物理学賞を受賞者といえど、無線通信の専門であるグリエルモ・マルコーニに調査を依頼するだろうか。なお発光する人間(心臓など)、アンナ・モラロに関する情報も当該新聞以外では管見の限り見当たらなかった。続報もなし。記事内の情報の噂が存在した場合、ブログや論文等でも紹介されているのではないだろうか。以上を踏まえると新聞に掲載された発光する女性の信憑性も疑わしい。