Nightfall

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【山人】柄谷行人『遊動論 柳田国男と山人』の解題

柄谷行人『遊動論 柳田國男と山人』(文藝春秋・2014年 )の解題

柳田國男*1の「山人」をはじめ、「遊動性」を通して、真の意味での自由や平等を模索した本書。柳田は「遊動」を2種類に弁別しており、「常民」から弾圧され、国家に抵抗していた「山人(狩猟採集民的遊動民)」と、移動農業・狩猟を行う「山民(芸能的漂白民)」がおり、前者の「山人」は天狗・山童・山女などの妖怪として伝承されることがあったという。
  従来、柳田は「山人(狩猟採集民的遊動民)」を重視していたが、1914(大正3)年に南方熊楠によって否定され、「常民(定住農民)」へ傾倒するようになり、1930(昭和5)年頃に「一国民俗学*2を提唱したが、「比較民俗学*3が提唱され始めた時期だったため批判されたのだという。
  柄谷は、柳田の「山人」放棄を一貫して否定しており、柳田は「碓葉村」で「協同自助(社会主義)」を発見し、「常人」や「固有信仰」*4を通して、「山人」の可能性を研究し、ユートピアの実現を模索していたのだと考察している。柄谷は、柳田の「山人」研究を通して、「国家と資本を超える(自由と平等の実現)」ために「交換様式」を提案している。交換様式Aは互報(贈与と返礼)であり、交換様式Bは再配分(略取と配分)(強制と安堵)、交換様式Cは商品交換(貨幣と商品)」、そして真の意味で自由や平等を実現するためには、交換様式D (かつて存在したであろう交換様式)が重要だと結論付けている。しかしながら、柄谷自身「交換様式D」については明確な解答が出せていないのが現状である。

参考文献&注

*1:1875生-1962没。民俗学創始者

*2:日本のみを研究対象とし、外国は視野に入れない民俗学

*3:海外との比較が重視された民俗学。→ 八木透『こんなに面白い民俗学』 2004=2007年、ナツメ社、p.274を参考。

*4:「狼」「祖霊崇拝」「社」「小さき者(児童)」などの事例がある。