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【異人論】小松和彦「異人殺しのフォークロア その構造と変容」(『異人論 民俗社会の心性』)の解題

小松和彦「異人殺しのフォークロア その構造と変容」(『異人論 民俗社会の心性』(1995=2015年、筑摩書房))の解題

小松和彦*1著『異人論 民俗社会の心性』は「異人」をテーマとした(加筆・修正された)論考が四本収録されており、民俗学・説話学・人類学的観点の考察が展開されている。本解題では民俗学に分類される論考「異人殺しのフォークロア その構造の変容」(pp.11-94)に焦点を絞る。
  従来、折口信夫山口昌男らによって行われてきたという異人研究*2。「異人」とは村落共同体外部からの訪問者のことであり、旅人・山伏・行者・巫女・シャーマンなどが挙げられる。
  小松は異人を論ずるにあたり、「異人殺し」伝説を採集した。この「異人殺し」伝説を通して民俗社会(村落共同体)の心性(精神構造)を明らかにしようとしたのである*3
  小松は「異人殺し」に関する伝説・昔話を構造分析した結果、村落共同体の「異人殺し」伝説には顕在的*4・内在的*5な機能があることを明らかにし*6、シャーマンの重要性を指摘している*7

参考文献&注

*1:東京都立大学大学院(社会人類学)博士課程修了。現在は国際日本文化研究センター所長。

*2:山口昌男の「異人論」は基本となる原論であるため、各論へ発展させ、「異人の処遇」について検討する必要があるという問題意識を持っていた小松。

*3:小松は「(中略)そうした異人に対してどのようなイメージをいだいていたのか、異人についての観念が民俗社会のなかでどのような形で機能していたのか、伝説や昔話の分析を介して垣間みようとしたものである。つまり、私が解明したいと思っているのは、民俗社会の心性の方なのである。」(解題本pp.13-14より引用)と述べている。

*4:村落共同体内部の異変解決のために異人を生贄にし、異変解決を図る機能。

*5:裕福な家に対する排除する機能。

*6:山泰幸(編著者)『異人論を再考する ―ストレンジャーの時代を生きる―』(ミネルヴァ書房・2015)pp.5-6を参照。

*7:なお小松和彦著『悪霊論 異界からのメッセージ』(1989年、ちくま学芸文庫)にはシャーマンの託宣(悪霊語り)に関する論考がある。